当院での肉離れ治療
肉離れの急性期において治療の中心はRICE処置になります。
R:Rest(安静)
I:Icing(アイシング)
C:Compression(圧迫)
E:Elavation(挙上)
原らの報告では、鍼治療は急性期(受傷後より72時間まで)に適応外では無いが、患部を避けて「損傷筋の起始・停止部に置鍼」とあります。
当院でも、治療は急性期より可能です。(鍼で損傷筋を避けての起始・停止へのアプローチができます。ただ、灸は熱感ある際には禁忌:悪化させる恐れあり)
基本的には、急性期は基本RICE処置を優先していただくようお願いしております。
左の図3ように、奥脇らの報告では、まずストレッチ痛を確認します。そしてストレッチ痛を認めた場合、もしくは早期に復帰を希望している際にはMRIを撮影をお勧めしております。積極的的に治療を行えないこの時期だからこそ、きっちりとした検査を進めます。
その手間が後々、再発させない!そのことをご理解ください。
MRIは関連病院(医療法人AR-Exグループ)へご紹介させていただきます。当院鍼灸師樋口の勤務先にもなりますのでご安心ください。MRIの費用は撮影を行う施設にもよりますが、7000円~10000円くらいです(3割負担)。
Higuchi鍼灸院における肉離れ治療
最初に理学検査で、「ストレッチ痛の有無」と「筋出力(Manual Muscle Test)の程度」の確認を行います。その後に「超音波検査装置を用いて、損傷の程度を確認(以下、テニスレッグの超音波像を参照)」します。
肉離れにおける鍼治療
鍼治療は受傷した時期、超音波エコー像を確認したうえで行います。
基本的には「周囲筋の緊張改善」に用います。肉離れ後に問題になるのは、損傷筋が修復した後に、隣接する筋の緊張症状が生じる場合です。
仮にハムストリングスの中でも、大腿二頭筋長頭の損傷が生じたとしたら、半腱様筋、半膜様筋の筋緊張・筋硬結部を丁寧に探し出し、常にニュートラルな状態をとれるようにしていきます。
肉離れ後の運動療法
肉離れに限らず怪我した後、何といっても復帰に欠かせないのは運動療法になります。
患者様の多くは一般のスポーツ愛好家のアマチュア競技者の方が多く、トレーナーがついて復帰していくわけではありません。
治るまで安静にしていて、「日常生活歩いたりしていても痛みがなくなった=治った」と感じている人が多く、いきなり競技復帰して再度受傷。休んだ期間が無駄な時間…というケースが多いように感じます。
再発しないためには、しっかりと「この動作が出来るようになったから復帰してよい」という明確な段階を踏んで行く必要があります。
競技復帰の目安としては、
①運動時の疼痛が完全に消失 ②関節可動域の制限がない状態 が目安になります。
また、運動療法に入るまでに肉離れをした筋線維が瘢痕化しないように、しっかり鍼灸治療・マッサージを行い、痛みの程度を見ながら、徐々にできる範囲での運動を開始していきます。
肉離れをした筋への負荷は、関節運動をなるべく伴わない運動から徐々に強度を上げていきます。①アイソメトリック運動⇒②コンセントリック運動⇒③エキセントリック運動へと負荷を上げていきます。加えて、徐々にランニング、ダッシュ、切り返しなどのアジリティ運動も行っていきます。サッカー等の対人とのコンタクトプレーがある競技について、復帰の順序としてコンタクトプレーは一番最後になります。
※運動療法に関しては以下を参照下さい(現在作成中)※
「(負荷なし)コンセントリック運動」
「アイソメトリック運動」
「(負荷あり)コンセントリック運動」
「エキセントリック運動」
「ランニングエクササイズ」
「ダッシュ」
「アジリティ」
MRIによる肉離れの重症度分類
奥脇によるMRI分類では3タイプに分類されます
タイプ1:腱・腱膜に損傷がなく,筋肉内・ 筋間(筋膜)の出血
復帰:数日~2週間以内
・臀部の筋間の出血・大腿直筋の出血・中間広筋の出血・ヒラメ筋の出血・恥骨筋・閉鎖筋の出血などもタイプ1に分類され、2週間以内に再発せずに復帰可能。
(★仁賀らの報告では、タイプ1には明らかに筋肉が部分断裂して途絶し,受傷後4週以上して再度MRIを撮影して筋の断裂部の修復が得られていないと再発を繰り返すタイプ(タイプ1-B)が存在)
タイプ2:筋腱移行部の腱・腱膜の損傷
復帰:受傷後6~8週を要する
・テニスレッグ(腓腹筋の損傷)もハムストリングスのタイプ2と同様になるので、MRI撮影や復帰過程も同様に考える必要がある。
受傷後3~ 4週でMRI撮影。腱・腱膜がある程度修復したことを確認した上でランニングを徐々に開始。
受傷後6~8週間でMRI撮影。腱・腱膜が十分肥厚して強度も回復したと判断されてから,ダッシュ・スプリント系トレーニング開始。
(★仁賀の報告では、従来半数近くの確率で再発していた外側ハムストリングはおそらくほとんどが共同腱のタイプ 2の受傷だった可能性が述べられている。)
(★さらに仁賀は、受傷後に早期復帰を望む競技選手は,MRIで修復状況を確認しないで復帰の過程を進めれば半数近くが再断裂し,再断裂するたびにMRIを撮影する状況になってしまう.再発を繰 り返した症例は,MRIでの腱・腱膜の修復確認, 競技復帰に6ヶ月以上かかる場合もあるので,初回受傷後に腱・腱膜が肥厚修復した結果をMRI で受傷後3~4週と受傷後6~8週で確かめることによって,再発させずに確実に復帰させた方が良い)
タイプ3:筋腱の短縮を伴う坐骨付着部近くの腱の完全断裂または付着部剥離
復帰:競技レベルの選手であれば観血的治療(手術)を行う。
(★保存治療でレクリエーショ ンレベルのスポーツに復帰することは可能だが, 競技レベルに復帰することは困難。)
参考引用文献:
日本臨床スポーツ医学会誌:Vol.24No.3,2016.「肉離れの診断と治療」奥脇透
日本臨床スポーツ医学会誌:Vol.22No.3,2014.「肉離れに関する最新の指針」仁賀定雄
医道の日本 第754号(平成18年8月号)2006年「スポーツ選手の肉離れに対する鍼治療の実際」宮本俊和
医道の日本 第754号(平成18年8月号)2006年「肉離れのアスレチックリハビリテーション」原賢二