日鍼灸誌 25巻2号 昭51.5.15 恵美直芳ら
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam1955/25/2/25_2_42/_pdf
以下、文献内より抜粋。
2 帯脈穴の観察
帯脈穴はいうまでもなく小陽胆経に属し, 側腹部の第11助骨尖端の下約1寸である。
子宮内膜炎, 卵巣炎, 帯下, 月経不順, 子宮痙攣 等の婦人科疾患の主治穴とされており, その他、輸尿管, 睾丸炎, 肝臓, 腎臓, 胃腸等 の諸疾患, 腰痛等にも用いられる穴である。
また これらの疾痛のヘッド氏帯ともいわれているが,
特に帯脈穴は奇経8脈の帯脈との会合部であり,
帯脈は帯脈穴をふくめて, 章門, 五枢, 維道の4穴附近から, 下腹部と腰仙部を一周して取巻いている。
このような観点から考えてみると, 帯脈穴刺鍼による刺激伝導は胆経の分布区域はもとより, 間接的には肝経にもおよび, また下腹部から腰仙部に伝わることが考えられる。
~中略~
殊に婦人科疾患に帯脈穴を応用している関係から、
太くて長い中国針による側腹部から下腹部におよぶ地平刺鍼は
現代生理学的からみても関心のもたれた刺針点であり, 経穴である。
3 刺鍼の方法
(イ) 帯脈穴の取穴は、側臥して第11軟骨尖端の下約1寸, 膀の高さのところとなっているが, 側臥して仮 点をつけておき, 仰臥して調べてみると同じ位置に相当していることがわかったので中国式に仰臥位のまま取穴して刺鍼した。
(ロ) 関元穴を取り仮点をつけておき, 帯脈穴から関元穴まで測定すると普通体格の人は約15cm, 少し小さい人は14cm, 肥満型で普通より大きい人は約16cmが 平均である。小型の人には8cm, 中型の人 には9cm, 大型の人は10cmの0, 32φ× 30番の中国針を使用した。
(ハ) 帯脈穴に鍼尖をあて, 関元穴を目標に刺入する。左手を押手に使い右手の環指か中指で鍼体を支えて栂指と示指でねじるようにして切皮する。切皮すると鍼は皮下組織と腹膜の間を地平刺で縫うよ うにすると鍼が吸い込まれるようにして刺入され るものである。また鍼柄側には約 1cmの鍼体は必ず残しておくべきである。
(ニ)刺入に際しては患者の呼吸を整え, また術者も呼吸をととのえ, すなわち気脈が一致した時に刺入 すると患者から痛みを訴えられることがない。もし呼吸があわない時は切皮も効かないし、痛みを訴える。このような時は呼吸を整えるまでしばらく待っておくべきである

~中略~
7 考 察
(イ)中国針で帯脈穴に刺鍼して置鍼をすると, 刺激の伝導区域は腹部, 腰部, 両大腿から下腿, 足背, 足蹴にまでおよび, 広範囲に刺激反応があらわれる。
(ロ)従ってその区域の神経機能ならび に, 血管運動が調整されることが証明された。
(ハ) 帯脈刺鍼 は刺鍼 部に近いほど刺激の感度が早 くて, 遠隔部ほどおそい。また上半身より下半身に刺激 反応が大きくあらわれる。
(ニ)帯 脈穴に7~10cmの 地平刺にお こな うと鍼尖 は遠隔部の下腹 に達す ることにな るが, 刺入点 の帯脈穴刺鍼の治効 とみな され るかが, 今後 の 研究課題 と考 えてい る。
8 結 語
(イ)中 国針 による帯脈穴刺鍼 は鍼刺激 になれ てな い者, あるい は意志 の不安定 の者には予告 な し に刺鍼す ることを避 けるべ きである。
(ロ)被 術 者に中国針法 の説 明をお こない, 十 分納 得 をせ しめるなど して慎重 に刺鍼す る必要が あ る。 の 体質 の虚弱 な者, 病弱 者特 に腹膜 炎等 にな っ た ことのある者 も注 意を要す る。
(ニ)中 国針による強刺激 は鎮痛効 果のみでな く血 液循環 の促進作 用に も効 果があ る。
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以上文献の引用終わり。
最近自分自身も腰痛患者に対して、帯脈穴から刺鍼することが多いのですが、
エコーで帯脈穴部分を描出してみると、背筋と腹筋のちょうどつなぎ目にあたるLIFTと呼ばれる構造の上部(もしくはやや腹筋寄り)であることが確認出来ている。
同部位(帯脈穴)上の皮下組織の硬さが顕著な患者さんだと、皮下組織部をpinch(つまんだ)際に強い痛みを訴える。そのような方程、刺鍼時に効果を得ることが多い。
過去に帯脈穴に関して検証したものが無いかどうか、検索をかけてみたところ、
本論文がみつかった。
昭和51年の文献で、今から48年も前の報告なのですが、
エコーを観ている人間からすると、体幹やや側方にある場所から、下腹部まで刺鍼することのリスクたるや計り知れない…。
文献内の「8 結語」の部分でも、
腹膜炎になったことのあるものに注意
とありますが、むしろこの刺鍼で腹膜炎を起こすリスクがありますけど…
と、少し批判的な意見を持ちました。
ろくに論文も書いていない自分が批判するのはナンセンスなのは、前提として…。
論文というものは、過去の先生方の叡智がつまっているものであることは疑う余地はない。
実際に筆者の先生が、このようにご報告をしっかり論文にしてくださっているから、議論することもできている。
リスクはリスクとしてしっかり指摘した上で、
刺鍼方向に関して、今までは帯脈穴より、真っすぐ外方に向けて刺鍼していたが、
この文献の様に、刺鍼方向を下腹部方向にして、エコー下で皮下組織にアプローチをかけてみると、また違った響き、改善がみられるかもしれない。
これは今後検証すべき一つの課題になりました。
2日目にして、得るもの多き文献考察!
「Higuchi鍼灸院におけるエコー下、帯脈穴刺鍼」
追って報告していきたいと思います。
Higuchi