今日は、文献のご紹介。
「地肌マッサージの頭皮への作用」
2014年の日本化粧品技術者会で花王株式会社ヘアケア研究所の方が発表されたものです。
簡単に言うと、
頭皮マッサージをすると、頭皮の血流が増加し、頭皮の「強張り」「ツッパリ感」といった、動きの悪さを解消し動きやすくなる。
といったものでした。
文献内では、マッサージと言っても、様々な手技があり、どのような手技が効果的なのか?
という検討もなされていて、「圧迫法」がもっとも血流上昇作用が高く、持続性も比較的高い。という結果でした。
ちなみに、ここでの「圧迫法」の定義としては、
頭皮に対して、約3㎏の荷重で押さえ、ゆっくりと加重をゆるめ、荷重のない状態とする。
これを2秒間に1回程度の早さで1分間繰り返した。
というものです。
その他の手技として、強擦法や揉捏法、軽擦法をもちいて検証されております。
少し専門的になりますが、
マッサージ(機械的刺激)によって、(皮膚)血流量が上昇する作用機構については、
「皮膚血管に取り巻くように近接する知覚神経が物理的応力を受けた際に、中枢に向けて求心性に触覚を伝えると同時に、局所反射としてカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)などの血管拡張性の神経ペプチドを放出し、血管平滑筋を拡張させる結果、皮膚血流量の上昇として観察されるもの」
と推察されております。
本文献では頭皮へのマッサージの効果検討がなされており、
圧迫法が効果的だった理由を、
「頭皮については、頭蓋骨といった硬い支持体を、血管を含む組織をはさんで、体側に有するため、外部刺激の物理的応力が組織中の血管運動神経に効率的に伝わると推察され、血流上昇といった生体反応がおこりやすいものと考えられる。特に圧迫法のような皮膚への垂直方向への刺激が施される場合は、皮膚・血管への応力がより強く加わるのであろうと推察した」
と考察しております。
またもう1点面白いことが述べてあり、
この研究では圧が一定にの強さに設定されており、
マッサージを受ける人によっての、適切な(「痛みは感じるものの我慢できない範囲ではなく、むしろ気持ちよいと感じられる程度の強さ」)強さは個人差があり、
適切強さだった場合は、副交感神経が亢進し、心拍数/拍出量の変化により皮膚血流量が増加し、
適切と感じず不満に思った場合は、交感神経の高まりに伴い皮膚血管収縮により血流量の低下する。
といった、可能性があるという考察もしておりました。
これは治療していて、非常に共感できるところがあります。
強く押してほしい方に対して、欲しい強さで押せなかった際に、帰って調子が悪くなった感じがするというのは、この情動による交感神経の高ぶりが原因だろうと思います。
鍼治療においても、最初は不安に感じて痛みに過敏になってらっしゃる際には、交感神経が高ぶりなかなか、思った効果が出ないことがあります。
「あ、鍼って意外と痛くないし、気持ちよいかも!」
と思っていただいた際にはこちらのものです(笑)
ただ、実際に自律神経が交感神経か副交感神経かどちらに高ぶっているのかを測定したわけではないので、経験側になりますが。
最近では、自律神経が交感神経か副交感神経かどちらが優位に傾いているかを測定する機器も出てきております。
そのような機器を用いて、こういう情動的な効果も加味したマッサージや鍼治療の効果を評価したものが、今後出てくると思います。
本文献では、実際にどのような頭皮マッサージが効果的かも記述してくれておりますので、詳細を読んでみたい方は、こちらにアクセスしてダウンロードしてみてください。
今回本文献を読み、当院行っている、頭皮への鍼治療の効果を持続させるためにも、このようなご自身で行えるマッサージは非常に有効であると感じました。
今後も様々な角度から毛髪に関して、検証していきたいと思います。
Higuchi